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研究概要

概要

現代文明は様々な有機化合物によって支えられており、人類が地球上で快適に生活する上で必要不可欠です。そのため、医薬品をはじめとする様々な機能を有する有機化合物を低コストで大量供給できることが切実に求められています。当研究室では、求められる構造を自在に合成するために、精密に設計された金属錯体を利用した高効率的かつ高選択的な触媒的合成反応の実現を目指しています。現在は特に、イリジウム触媒を用いる不斉合成、立体、位置、官能基選択的反応の開発とそれらを用いた新規芳香族複素環化合物の合成などを行っています。

1. 付加環化反応による新規多環式複素環化合物の合成

縮合多環式芳香族化合物は、その魅力的な電気化学的特性と光化学的特性のために有機エレクトロニクスや発光材料などの機能性材料における重要な基本骨格として期待されています。遷移金属触媒を用いた[2+2+2]付加環化反応は、縮合多環式芳香族化合物を合成するための直接的かつ原子効率的な方法であり、私たちの研究室ではイリジウム触媒を用いたジインとアルキンまたはニトリルとの反応によって、多様な置換基をもつ様々な縮合多環式芳香族化合物の合成に成功しています。

2. エナンチオ選択的アリル位置換反応

遷移金属触媒を用いた不斉アリル位置換反応は、アリル位に不斉中心を構築するための直接的でかつ信頼できる方法です。私たちの研究室では、イリジウム/光学活性配位子錯体を用いることでこれまで実現されていないアリル位置換反応を非常に高いエナンチオ選択性で実現しています。

3. カルボニル化合物を用いた脂肪族アルケンのヒドロアルキル化反応

1,3-ジカルボニル化合物を用いたアルケンのヒドロアルキル化反応は、原子効率的かつ直接的に炭素-炭素結合を構築することができる優れた反応であり、反応性の低い脂肪族アルケンの高効率的なヒドロアルキル化反応を私たちの研究室は初めて達成しました。

(参考文献)

  1. Takeuchi, R.; Fujisawa, S.; Yoshida, Y.; Sagano, J.; Hashimoto, T.; Matsunami, A. J. Org. Chem.2018, 83, 1852-1860.
  2. Matsunami, A.; Takizawa, K.; Sugano, S. Yano, Y.; Sato, H.; Takeuchi, R. J. Org. Chem. 2018, 83, 12239-12246.
  3. Takeuchi, R.; Sagawa, J.; Fujii, M. Org. Lett. 2019, 21, 741−744.